《MUMEI》
友達
「モテモテだな、あの子」


声を掛けてきたのは、親友の"高岡 智"。

小学生からの幼なじみだ。



「そうだな。でも、俺はああいうのタイプじゃない」


「だと思った。それに、黎夜には俺がいるもんな!」


「はぁ?俺はいつからお前と付き合うようになったんだ?」


「まぁ!黎夜君ったら酷いわ!私の彼は黎夜君だけだと思ってたのに!!」


「まったく、バカ言ってんじゃねぇよ」


「ハハッ、いいじゃんよ。俺はそんくらい黎夜が好きってことだよ」


「う〜ん、男からコクられてもなぁ…」


「普通、そう受け取るか!?悪いけど、俺もそっちの趣味はないぜ。……おい、柊がお前のこと見てるぜ」


「え?」




窓際で喋っている俺を
柊はあの冷たい目で見ていた。



「黎夜に一目惚れしたのかな」

「んなわけねぇだろ」

「わかんないぜ?」

「何でだよ。俺に、一目惚れされるような良いところなんて一つも…」

「どうした?……あ」



柊は、静かに席を立つと真っ直ぐ俺に近付いてきた。


俺は、身動きができなかった。彼女の何ともいえない雰囲気に圧倒され、柊に対して少しだが恐怖を感じていた。





「な、何だよ?」





僅かに声が震える。





クラスメイトの女子相手に、俺は何をビビってんだ?相手は普通の女の子だろ。



そう思っても、気は楽にならない。



俺の背中を、ヒヤリとした嫌な汗がつたう。






「月代君…だよね?」

「あ、あぁ」

「お隣にいるのは高岡君ね?」

「おう。名前覚えんの早いな」

「二人とも、これから宜しくね」







そう言って、柊は俺に手を差し出してきた。

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