《MUMEI》

「…よろしく」






俺も手を差し出して柊の手を握った。


その瞬間、頭の中で直接響くような声が聞こえた。







『やっと見付けた!お前ら3人とも呪ってやる!!』







――な、何だ!?
何が起こってるんだ!?

しかも、3人とも呪う?3人って誰のことだよ?







『許さない!

 許さない!

 許サナイ!

 ユ ル サ ナ イ!!』








「――‥月代君?」

「…え?」






名前を呼ばれ辺りを見渡すと、心配そうな顔をした柊と智がいるだけで、もう声は聞こえなかった。






「黎夜、どうした?」

「あ…いや、何でもない」

「? 変な奴」

「じゃ、私はそろそろ席に戻るわね。授業が始まっちゃう」





俺は、柊の後ろ姿を見ながらさっき起こったことを思い出していた。






「おい、本当に大丈夫か?顔色悪いぞ?」

「あぁ、大丈夫」

「そうか?ならいいけど」

「それよりさ、柊といたとき何か聞こえなかったか?」

「何も聞こえなかったけど?黎夜が柊の手を握ったまま固まって動かないから、心配して柊と俺で声は掛けたけどな」

「…そっか。気のせい…か」

「どうかしたのか?」

「いや、何でもない」







俺には、あんなにはっきりと聞こえていたのに、智には聞こえなかったのか…。


ってことは、やっぱ気のせい…だよな。



他の人には聞こえていなかった声を、俺は気のせいだと自分に言い聞かせるしかなかった。

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