貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
「酒」
生まれ育った森を抜けた。
俺は振り返ることなく歩みを進める。
(王よ、レイニーを頼みます)
夜はまだ続いている。
やがて街道に出る、人に整備された道、その先に何があるのか俺は知らない。
そろそろ歩いて行くと、河を隔てた先に街が見えた。
俺は雨を凌ぐため、人目を避けながら街へ入った。



人間達の居住区はレンガを積んで作られたまさに石の家であった。
幾つかの家からは明かりが漏れている。
俺は気配を消し、古びた家の一角に腰を降ろした。
(……)
しばらく辺りを見つめる。
(……腹、減ったな)
森を出る時に用意した食料を出そうと皮袋に手を伸ばす
「…しまった」
先刻の戦いで皮袋を落としていた。
「参ったな…」


さらに時間が経ち、空腹ながらも眠りにつこうとした時だった。


目の前に男が1人、立っていた、黒いロングコートにシワの畳まれた老人であった。
傘を片手に男は歩み寄ってきた。
そして、口を開いた。
「その顔の傷…」
昔人間に受けた顔の切り傷を男は指差した。
「アンタ、こんな所で何してる」
「……雨を凌いでいるだけだ」
言葉を話せることに驚いたようだ
「そんなとこにいては風邪を引くだろう、どうだ、ウチに泊まっていかんか」
そう言うと、振り返って歩きだした。
「俺の姿が見えていないのか?」
スッと立ち上がって、雨の中に俺も続いた。

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