《MUMEI》 その日から──休み時間になると、ツバキは加藤先輩と会うようになっていった。 図書室に行こうとしていた私は、二人が階段の踊り場で話しているのに気付いた。 「今度──聴いてくれはりますか‥? 俺の笙」 「‥笙‥?」 「おれ、ずっと小雪様の為に吹いとりました──‥今までも。またお会い出来たら聴いてもらいたい思て‥」 「───────」 「分かっとります‥帝様ん事お好きやったて事は分かっとります‥せやけど‥‥‥諦められんかってん」 「‥‥‥ええと‥」 「ぁ‥前言うてもうた事は気にせんといて下さい‥ほんま無意識やったんで──」 「‥‥‥‥‥‥‥」 「ただ、聴いて欲しいんです」 前へ |次へ |
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