《MUMEI》

「‥‥‥ぇ‥」

「約束する。だから心配しなくていい」

「‥菜畑‥」

「取り敢えず戻らないか、教室に」

「──ええ。サクヤ、行きましょ」




 ツバキに呼ばれて、私も歩き出した。




「───────」




 歩きながら、さっき聞いた事を思い出す。




 加藤先輩も‥ずっと言えずにいたんだ。 好きだ、って。




 自分は雅楽師で、小雪様はお后様で。




 何だか‥私と黄羽様に似ている気がする。




 でも‥先輩の方が辛かったんだ。身分の違いだけじゃなくて‥その人の気持ちが別の人に向いているのをずっと見ていたんだから‥。

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