《MUMEI》 動揺. 「……なんか、飲めば??」 俺は車内に放っていたコンビニの袋を顎で示しながら、気休めに稟子に言った。彼女は力無く頷き、袋をあさる。 −−−そして。 稟子が動きをとめたので不審におもい、俺はチラッと視線を流し、たまげた。 稟子は、俺が買った週刊誌の表紙を、食い入るように見つめていたのだ。 …………ヤベェッ!! バレた?バレちゃった!? 禁断の袋とじ企画!! 今夜の俺のオカズ!! ドキドキしていると、稟子はパラパラと雑誌を開く。 ………ああぁぁっ!!? 稟子はひたすらページをめくり、雑誌を読むことに没頭している。 俺は焦りに焦った。 「あの、それは、別に袋とじが目的じゃなくて……」 一生懸命、言い訳をしている俺に、 稟子はぽつんと、呟いた。 「………バカみたい」 俺は戦慄する。 …………そうですよね! はい、バカですよ!俺はバカです!! ドライバーなのに、欲望に負けて、 エロい袋とじがついてる雑誌なんか買って、 読めやしないのにね!! 言葉を探していると、突然、稟子が雑誌を破り捨てた。 俺はたまげる。 ………まだ、袋とじ開けてもいないのに!! つーか、そこまでしなくても!! 「ちょ、ちょっと……」 チラチラ稟子の方を見ながら、彼女を制止させようとしたが、ムダだった。 稟子はあっという間に、開いていたページをビリビリに破いて、その紙きれを空中にばらまいた。 花吹雪のように、ひらひらと紙きれが儚く宙を舞う。 ア然としている俺に、稟子は静かな声で言った。 「………いつから、気づいてたの?」 …………。 ……………は?? 「なにが??」 わけがわからず、俺は尋ねかえした。 稟子は物凄い形相で俺につめよる。 「しらばっくれないでよ!!知ってたんでしょ!?」 「だからなにが??」 さっぱり話が読めない。 稟子はますます顔を険しくして、顔を近づけてきた。 「『なにが??』じゃないわ!!アンタ、面白がってたんでしょ!?わたしが………」 そこまでまくし立てたとき、 ドリンクスタンドに置いていた、俺の携帯が鳴り出した。 . 前へ |次へ |
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