《MUMEI》
以前
     =翌日=




「おっす、黎夜!」

「おう!」






挨拶を交わし、智と喋る。それは俺の日課だった。






「ところでさ、家に帰ってから気になった事があったんだ」

「何だよ?気になった事って」

「変なこと言うけど…俺達、柊に一度会ったことねぇか?」

「…はぁ?何言ってんだよ?」

「俺だってまさかとは思うんだけど、どこかで会った気がするんだ」

「んなわけねぇよ。第一、柊は生まれも育ちも秋田だって言ってたじゃねぇか。ここは千葉だぜ?」

「それは分かってるけど…。よぉし、こうなったら、柊に直接聞いてくる!」

「お、おい!ちょっ、待てよ!」






ったく、そんなわけないって言ってんのに聞きやしない。






「なぁ、柊。ちょっと質問があるんだけど」

「高岡君達と私が、以前会ったことがあるかって質問ね?」

「何で分かるんだよ!?」

「あれだけ二人で騒いでいれば嫌でも聞こえるわ」

「なるほど。…で、答えは?」

「……答えは"No"よ。会ったことなんてないわ」

「マジ?やっぱ俺の勘違い?」

「だから言ったじゃねぇか」






智は、まだ納得いかないようだが、柊自身に否定されてしまっては、諦めるしかない。



俺達と柊が会ったことがある?何で、智はそんな事言い出したんだ?

そんな事、あるわけないのに…










この時、智が何であんなことを言ったのか。俺は、それを死ぬ直前まで知ることはできなかった…。

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