《MUMEI》
もしも、守が
この時


もしも、守がいつものように俺と接していて


『大した事じゃ無いんだけどさ…』


そう言って、話してくれていたら


俺と忍は、もう少し弘也を警戒したかもしれない。


弘也はこの時、確実に京都から俺に近付いていた。





※守視点


GW、俺は一人で店の仕入れの為に、京都にある染め物職人の工房を訪ねた。


その時、聞いた奇妙な噂


時々、出没する


黒髪に青い目の美少年を探す男の存在


『本当に知りませんか? 名前は祐也というんですが』


(祐也って…まさかな)


その日も工房にやってきた男は、見たこともないし


祐也からその名前を聞いた事も無かった。


だから、連休が明けても俺はその事を祐也に話さなかった。


それに、陸上クラスマッチの前日


工房の親方からわざわざ連絡があった。


俺が工房で男を見かけてからしばらくして、男の姿は京都から消えた、と。


『坊(ぼん)の事も、友達の美少年の事も、誰も何も教えてへん。

けど、一応伝えとこうと思ってな』


親方は、信用できる人間だから


だから、俺は皆に囲まれて楽しそうにしている祐也にあえて言う必要は無いと思った。

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