《MUMEI》

「この恰好おかしくない?」よく見てもらえるように俺は乙矢の座る机の横に立った。
乙矢に明日の着ていくものを最終チェックしてもらいにきたのだ。


彼一人のお告げにさえ従っていれば一般意見を味方に付けたも同じだ。


「……普通。」


「普通じゃダメなんだよ!
本当に何も言うことないのか?」
ただでは帰れない。俺は平凡なのだからせめて身なりくらいはしっかりしたい!


「ベルト……こっちの白いのにしたら?

すぐ返せよ。
そしてすぐ帰れ。」
乙矢は自分のジーンズからベルトを抜き取って渡す。
そろそろ消えないと、勉強の邪魔になる。
明後日は全国模擬試験だからな。

美作家は綺麗で居心地いいから、ついつい長居してしまうのだ。
祖母の代から裕福で家がかなり広い。

その横に美作の土地より小さな柊荘という四世帯しか住んでない……つか、住めない、震度3の地震にも耐えられるかどうかなアパートが建っていて、そこに内館家が暮らしている。


更にオンボロアパート柊荘の隣にごく平凡な一般家庭レベル一軒家の木下家が並ぶというアンバランスな見栄えの町内だ。

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