《MUMEI》

 坂本に新しい彼女が出来たと報告を受けた日から毎日のろけ話を聞かされている気がする。実際坂本は俺の家の隣に住んでいる訳だから頻繁に俺の部屋に来てはリピート機能をつけたまま延々と同じ曲を繰り返す移動式オーディオ機器のごとく俺の部屋の家電製品と化して高らかに唄っていた。

 俺の仏頂面を単に羨ましくひがんでいると勘違いをしたらしいと分かったのは坂本がこんな話しをし始めた頃からだった。

 「それで前に話してたやつの日程が決まったから。今週の土曜日は空けておいてくれよ」

 はて?なんのことだろうとそのままの表情が坂本に伝わったらしく坂本が続きを話し始めた。

 「紹介するって話しさ」

 それでも俺の頭の上に浮かんだクエスチョンマークが消えることはなかった。

「奈々の友達でめっちゃ可愛いらしいよ」
 「すまん坂本………」

 やっとこれだけを口にすることが出来た。

 「なんだよ、都合悪いのかその日。だったまた調整しといてやるよ。いつだったら………」

 「いや、そうじゃなくそんな約束いつした?」

明らかに驚いた表情で硬直する坂本と困惑の俺の表情がしばらくにらめっこを始める。

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