《MUMEI》

僕は『ノープロブレム…ダンケ(大丈夫です…ありがとう)』と言ったのに、その人は”いいんだよ”みたいな事を言いながら僕の抱えていた荷物を持とうとしていた。

「あっ、ナインダンケ…(いいえ結構です)」

そう言ってもその人は軽々とその荷物を持ってくれると、指で道を指しながらドコへ行くんだいとか言っていた。

僕が家の近くの通りの名前を言うと、その人は分かったと頷いたかと思うと僕の手を急に握ってきた。

(えぇっ///)

後は何だか色々と話しかけてきたけど、ほとんど分からなくて僕はただ愛想笑いをするしかなかった。

その話の中で『一緒にカフェに行こう』とか言う単語が聞こえてきて、家の近くのカフェに差し掛かるとそこに連れ込まれそうになった。

「あっ、その…アイネンモーメント、ビッテ(ちょっと待って下さい)」

慌てて引き止めるけど、何だかどんどん引きづられて一緒にお茶をする事になってしまた。

(どうしよう…コレって浮気みたいだ…でも僕の心は浮ついて無いんだけど)

ドキドキしている気持ちを落ち着ける為に、まだ暖かい季節だったけど温かい紅茶を頼んだ。

ドイツ語で熱いは”ハイス”と言うんだとか、聞いた限りではアイスみたいで冷たそうだ。

運ばれてきた紅茶を飲んでいると彼は僕の手を握りながら”アーユーセンシティヴィティコールド?”とか”プアサイクル”がどうのこうの言ってた。

(別に貧しいから寒いワケじゃないけど…)

「はぁ…///」

彼も僕を見ながらお酒か何かを飲みながらニコニコしていた。

…なんとなく思い出す…昔のあの人の事。

この人みたいに逞しくて、強引で、勝手な人。

(…ぁっ///)

ボーッと考え事をしていてテーブルの下で足がぶつかってしまったみたいで、あわててその足を引っ込めるとまた足が触れ合った。

(…コレってもしかして…わざと?)

思い出した、テーブルの下で足を絡ませ合うアレ(フィッツィー)だ、深夜に海外の映画を見ていた時にあの人に教えてもらったんだっけ…。

(克哉さんとしか、した事ないのに…)

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