《MUMEI》
15年前…
あれは15年前…





『あの子、何だか最近気味が悪いのよ…』
『お前も…感じていたのか。』

トイレに行きたくなり目を覚ました俺は、リビングからそんな会話が聞こえてきたのに気付いた。

そっと中を覗くと、父と母が声を潜めたように会話をする姿が目に入ってきた。

何話してんだろ?


俺はトイレに行くのも忘れて、二人の会話を聞こうと耳を澄ませた。


『当たり前じゃない!だってあの子…時々、まるで魂の抜けた様な目付きをするのよ!?
まだたったの5歳なのに、“感情”っていうモノが失くなってしまったような、そんな目をするもの…』

母は興奮している様な、切羽詰まる様な、そんな様子で父に迫っていた。

『あぁ…そうだな。』

興奮する母とは逆に、父は至って普通な様子だった。いや、今思えば、父は母を少しでも落ち着かせようと、平然を装っていたのかもしれない。

『それだけじゃないの!』
しかし父の努力も虚しく、母の興奮は治まらない。

『あの子ったら今日ね…』
母の顔は血の気が引いたように真っ青になっていた。
声も何だが震えている。



今日?
僕何かしたっけ…?

いつも通りだったよ?

いつも通りいい子してたよ、お母さん。


『今日、あの子と公園に遊びに行ってたんだけど…』

あぁ!楽しかったね、お母さん。


『途中で何処か行っちゃって…』


可愛い子猫見つけたんだぁ。


『戻ってきたと思ったら…』


母はいつの間にか、声だけでなく、体全体が震えていた。

『血が…っ!あの子の口の回りにベッタリと血が付いてたの!!』


…え?


『お前、見たのか?』
『あなた知ってたの!?』『あぁ…。』




この人達、一体何の話してんの?
僕、サッパリわかんないよ…

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