《MUMEI》

「──サクヤ」

「ぇ‥」

「‥これ」

「──ぁ‥」




 ぇ‥‥‥これ‥。




「あの‥」

「これ一冊だけだが‥あの髪飾りと共に残っていた。‥渡すべきかどうか迷ったんだが‥」

「──黄羽様の字だ‥」




 だいぶ掠れているけど、確かにこれは黄羽様の字だ。




「──ありがとう」




 ──懐かしい気持ちがした。




 それから、心があったかくなった。




 ありがとう、アゲハ君。




「──?」




 ──ぎゅっ、と手を握られた。

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