《MUMEI》

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…………まったく、


どこまでもお気楽なヤツだな、あいつは。





ひとりごちていると、運転席の隣に、稟子が破り捨てた週刊誌が落ちていることに気づいた。





…………こんなにしちまって。


俺のオカズなのに。





ぶつくさ言いながら、その週刊誌を拾いあげた。そのままパラパラと流し見る。

確認したところ、俺が楽しみにしていた袋とじは無事のようだった。どうやら、稟子が破ったのは、週刊誌の中の一部のページらしい。ちょっとだけ、ホッとする。





…………それにしても、


稟子は、なにを読んであんなに怒ったのだろう……。





俺は破られたページを見てから、目次を開く。破り捨てられた、その記事を確認するためだ。


目次と照らし合わせて、俺は眉をひそめた。


それから雑誌を閉じ、表紙を見る。


芸能ネタの見出しの中、


美しい女の顔写真が載っている。


艶やかなロングヘアー。スッと通った鼻筋。シャープな顎のライン……。

一番、印象的なのは、

野良猫のような、挑戦的な目つき。


その写真の隣に、

でかでかと書かれていた、それは−−−。





《美人モデル『Lee』 失踪の裏側!!》




俺は床に散らばった、紙切れに視線を落とす。

稟子がばらまいた、週刊誌の紙切れだ。

その数枚に手を伸ばした。


雑に破られたそのページには、『Lee』に関する記事が書かれていたようだ。

俺は目を懲らして、記事を読む。





《人気絶頂のモデル『Lee』の心の闇》

《失踪の原因は恋人『シド』の浮気だった!!》

《所属プロダクション社長とのヒミツの愛人関係!奥多摩での『極秘パーティー』の真相!?》





どれをとっても、うさん臭い内容ばかりだ。





…………売れない、三流ライターが書きそうな見出しだな。





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