《MUMEI》

……帰りの電車は 時間帯がよかったのか比較的に乗客は少なくフサシはゆったりと足を投げ出せるくらい座席に座り込むことができた……

ほろ酔いの気持ちよさに 気疲れや傷心も加わって アザラシのように目を閉じてぐったりしているフサシのアタマの回路は…まるで仕掛け花火の様な混乱した考えが 行ったり来たりしていた


《……あ〜あ……飲むことによって逆にストレスになってしまったな…… ソレにしても あの団体客は皆 無礼で否な奴ばかりだったな ……… 知佳子と一緒に行くときは 決まって隣の席に可愛い娘が いたりするのに……… たまに 一人で 飲みに出たら……いつも必ず否な野郎に出会う……それも………最悪な……あの虫の好かない 梨田の奴みたいな………… あ〜ホント俺は…ついてない……そんな運命なのかな……》

フサシの酔ったアタマの中は トイレで一人悔し涙に濡れた バイト先の梨田の顔が…… 『その火山が噴火した後の冷え固まった溶岩の塊のような憎らしい顔』と、 さっきの居酒屋の団体客の男たちとが重なって
この電車いっぱいに 唾を吐いて歩き周ってやりたい! ………そんな 気分が 渦巻いていた …


冷房の効いたゆったりと寛げる 帰りの電車は…
片方のアタマには 至極心地よい 風が吹いていた

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