《MUMEI》

…青春が楽しいと言うのは瞑想である…青春を失なった人達の 瞑想である 。
『 S モーム 』




…うなだれたアタマで片方の手をポケットに入れたまま トボトボと歩いている ボクがいた ……


途中前に二度くらい食べた事のある焼き鳥屋の匂いに誘われたが… 店の前に行くと 大勢の賑やかな客の声が聞こえたのでボクは入るのをやめた 。



向こうから無灯火の自転車が我が物顔に道の真ん中を走ってくる…

ボクは わざと逃げてやらなかった …
酔っぱらいの振りをして 左右に ブレて歩いてやった……大股で…

若者らしきその自転車は 「ちぇっォ…」と 小さく声を上げて ボクを 避けた


ボクは 一瞬勝ったと思い…気分がよかった 。

アパートの隣の門まで帰って来ると…またあの太った野良猫が じ〜と動かずに ボクが部屋へ入っていくのを最後まで見つめている 野良猫のくせにアチコチから餌を集る陰気な猫だった。



薄暗い部屋の灯りをつけて携帯を台所のテーブルに置くと 知佳子からメールがきていたのを 今 気が付いた



『 元気ですか タマロフスキー教授 (笑) こっちは 蒸し暑さがなくて サイコーだよ あと三日間頑張りマ〜ス ォ
ところでサ あのプルジンスキー教授のコト訪ねて来た人たちって 政府の役人らしいのよね ネ それも ロシアと日本の…って フーくんの預かった携帯のコトもいろいろ聞いてたみたいだって!!まぁ…また詳しいコトわかったらそのときにね〜
暑いけどバイト頑張ってファイト!
じゃまた連絡してね

知佳


…《 …いいなぁ アッチは…ヒトの気苦労も知らずに…… 》

フサシには 今を楽しそうに過ごす知佳子が なんだか 次第に遠い存在になっていく様な不安を感じてしまった


《…教授の携帯かぁ……》
グラスの水を一気に飲み干すと…暫く見ていない プルジンスキー教授から預かっている何やら怪しい携帯を…
フサシは机の引き出しから 鍵を外して取出した… 。

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