《MUMEI》

「今、ちょっと寂しいキャンペーン中なんだ。」


「薔薇吐息キャンペーン中だろう。」

それは俺のキシリトールガムのCMだ。


「何故かと言うと、まねいじゃが変わるのです。ずっと俺の世話してくれていたのに……」


「寂しい?」

つい、睨んでしまった。


「いろいろあるんでしょうよ。」

そりゃ、そうかもしれないけども。


「光、お前ならいつも通りだよ。不安なんて蹴散らせる、それだけの力があるんだ。」

国雄の呪文が、重なる手と共に摩り込まれてゆく。


「見ててよ?」

確認しておく。


「……愛しい人を見つめるのは国雄さんの役目ですからね。」

この、色男気質は根っからのものなのか?
でも、国雄さんのこの優しい微笑みは俺だけのもの。

それだけで一生分の、稼働力になる。


「ずっと見てくれたらいいのに……また暫く離れるんだ……。」

最近、映画の仕事が増えて、長期の撮影で帰れない。


「まあ、今日は二人でずっといましょうか?」

……なんて、
甘い言葉で囁かれたが、後々、掃除やらツンの散歩やらの地獄の特訓が待ち構えていた。

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