《MUMEI》 そうして、俺もテレビを見つめる。 『Lee』は、最近出演した映画のことに関して、インタビューを受けていた。 《………女優業に転身してからも、お仕事の方は順風満帆といったところですが、プライベートは、どうですか??充実してます??》 司会者のあからさまな質問に、『Lee』は苦笑していた。そうですね…、と呟き、答える。 《………お休みの日は、出来るだけ、お仕事のことは考えないようにしています。皆さんも同じでしょうけど、ちゃんとリフレッシュしないと。どうしても疲れちゃうでしょう??》 彼女の返事に、司会者は深々と頷き返しながら、彼女のリフレッシュ法について、さらに突っ込む。 『Lee』は少し悩むように、きれいなラインの顎に手を添えながら、う〜ん、と唸った。 《……居心地のいい人との、ドライブですね!!……》 俺は目を見張る。 司会者は、大袈裟に驚いたフリをして、すかさず返した。 《……『居心地のいい人』っていうのは、あの噂の『シド』さんですか??……》 含み笑いをしながら尋ねた。明らかにテンションが上がっている。 ………噂の『シド』、か。 まあ、そうだろうな。 あの華やかな世界に身を置いているなら、浮名のひとつやふたつ………。 突然、くだらなく思えてきて、俺はテレビから目を逸らし、乱暴にラーメンを食べはじめた。 『Lee』の明るい笑い声が響いた。 《……まさか!!違いますよ!!彼はお友達ですから……》 はっきり否定された司会者は、引き下がるつもりはないようで、さらに詰め寄った。 《……それじゃぁ、一体、どんな人なんですか??……》 その問い掛けを待っていたかのように、『Lee』は胸を張り、はっきりとした声で、言った。 《……ずばり!プロ意識の高い、トラックドライバーです!……》 それを聞いて、 俺はラーメンを思い切り吹き出した。 むせている俺に気づいたカズヨシは、顔をしかめて、きたねーな!と怒った。 . 前へ |次へ |
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