《MUMEI》 『あ… 憂鬱だ……… 』 仕事へ向かうフサシの気分は早朝の電車の様に重かった 横暴に振る舞う梨田に対して今にも飛びかかってその凹んだような顔面に一発食らわしてやるぞ!……と、いった素振りを見せたフサシに対して……梨田はあれ以来完全に無視したような態度をとってフサシを避けていた 《…まるで 八州の役人様だな…… 》 梨田がボクに対して戦法を変えたのが手に取るようにわかる…… 青果市場はとてつもなく朝が早いので ボクが仕事場に着く頃には 競りも終わり 一段落して これから忙しくなる出荷に備えて皆準備している …… そんな時間帯だった 『おはようっ ス ! 』 『おはようッス 』 いつものように 広い市場を抜けて ロッカーへ向かう アチラコチラに野菜の切れ端や段ボール箱が散乱している… 掃除係のおばちゃん達が忙しく動きまわっている… 会社の休憩所には 四〜五人位いたが 今日はいつもより少なかった いつもは 他の会社の人間がいたりして 七〜八人は必ず屯(タムロ)していた 《 アレ……今日 ケンちゃんは休みか……… 》 ケンちゃんは 同じくバイト仲間で ひとつ年上の元フリーター ボクより1ヶ月早く前からここで働いている 数少ない気の合う仕事仲間の一人だった 。 『おはようッス 』 『あ !…おはよう ……おはようッス 〜〜オッス〜〜 オハッす 〜〜 オッス …… 』 普通 こういう朝の挨拶を交わす場合 受けたら 返すのが… どんな社会、どんな職場、どんな世界だろうと慣例なはずだ 梨田は挨拶するボクの姿を見るや わざとらしく 顔を背けて 椅子から立ち上がった 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |