《MUMEI》
『あなた、なんで早く教えてくれなかったの!?』
『お前が不安がるかと…』
父は申し訳なさそうな顔をした。
母は暫く頭を抱え込んだままだったが、父なりの優しさだと気付いたのだろう。それ以上、責めなかった。
『それより不思議なのよ、あの血は一体なんなのかしら?あの子のモノじゃないのよ…傷一つ無いもの。』
『お前…見たんじゃないのか?』
『見たって、何を?』
母は皆目検討もつかないといった目で父を見る。
黙り込んだ父を見ていた母は、まさかと思い聞いてみた。
『もしかして…あの血、何だか知っているの?』
聞くのが恐ろしいらしく、母の顔から更に血の気が引いていく。
『いや…何でもない。』
『いいから言って!』
また母を気遣かってか、父は何かを言うのを拒んだ。こればかりは頑なに口を開かなかったので、流石に母も諦めたようだった。
『ねぇ、あの子何かの病気なんじゃないかしら?』
『病気?』
病気?僕が…?
『だって!それしか考えられないじゃない…』
母は、自分で言ってはみたものの、自信がなかった。こんな病気、本当にあるのだろうかと…。
『とにかく明日、私あの子を病院に…』
『いや、病院じゃない。』
父は母の言葉を遮り、そして言った。
『教会へ連れていく。』
その時だった。
全身に激痛が走り、割れんばかりの頭痛が俺を襲った。
それと同時に聞こえてきた声…
教会、だと…!!?
俺の声じゃない声が頭に響いたかと思った瞬間、意識が飛んだ。
気が付いたら父と母が死んでいた。
目の前に広がる血溜まりの中、父と母は無惨にも切り刻まれて死んでいたのだ。
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