《MUMEI》
相田愛理視点
「じゃあ、洋子さんの分と田中君の分ね」


貴志に確認して、私は通話を終えた。


「あのね、愛理…」


すると、急に薫子から笑顔が消えた。


「何?」


薫子がこうなるのは、真面目な話をする時だと知っている私は、身構えた。


「数日前、瞳の所に、田中君を探しに怪しい男がきたらしいの」

「は!?」


(何でここ!? 何で瞳!?)


あまりにも意外な薫子の言葉に、私は目が点になり、開いた口が塞がらなかった。


そんな私をよそに、薫子は包装の手を休めず、説明を続けた。


「ほら、瞳の店に『二人静』の写真あるでしょう?

あれ見て、田中君の居場所を訊いてきたらしいの」

「あぁ、あれね」


(確かあれって、田中君の先輩が撮ったんだっけ)


その時使用したカメラが瞳の店で買った物だからと、律儀に届けた作品


後に田中君の先輩が、有名カメラマンの弟子になった事がわかり、瞳はそれを宣伝も兼ねて店頭に飾っていたのだ。


「瞳は何も言わずに追い払ったし、その時しか来ていないけど、愛理も気をつけてね」

「わかった」


そして、私は男の外見と苗字、乗っていた車の特徴を聞いた。

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