《MUMEI》

 二人で見上げる桜は、やっぱり凄く綺麗で──不思議な感じがした。




「やっと──約束を果たせた」

「ぇ」

「ずっと‥後悔していた。君との約束を破ってしまった事を‥」

「仕方なかったんだよ──黄羽様のせいじゃない」

「──そうだよっ♪」

「悪い癖だよ? 昔からの」

「そうそう。すぐ自分のせいだ、って気にするのよね──」

「いつからいた?」

「ちょっと前から、かな──」

「お兄ちゃんお帰りっ♪」

「ぁぁ──ただいま」




 アゲハ君が、笑った。──みんなも。




「──ぁ」




 ふわり。




 ひとひらの、花びら。




 小さな、恋の欠片。



 手のひらに落ちてきたそれを、私は──ぎゅ、っと握り締めた。

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