《MUMEI》 灰島和真という男「げばぁ!?」 いかにもヤラレ役といった悲鳴を上げて地面を転がって行く男。そんな男を、ビシッという効果音でも付きそうな勢いで指差す少年がいた。 「俺の目の黒い内はカツアゲ他諸々の悪行は許さん! ダメ! 絶対!」 「は、灰島君、それは薬物乱用の……」 「ん? まあいいじゃないか、日本語的におかしい訳でもないし。」 それより、と灰島と呼ばれた少年は人好きのする笑顔を浮かべて続ける。 「無事で良かったぜ。」 それは心からの言葉だった。灰島と助けられた少年の間に接点は無い。友人でもない赤の他人である自分にこんな言葉をかけてくれる灰島は、少年にとって眩しい存在だった。 灰島に助けられた少年は、後に彼に憧れて強くなっていくのだがそれは別の話。 「それじゃあな! 何かあったら言えよ、力になるぜ!」 少年に背を向け、右手を上げながら颯爽と去っていく灰島。その精悍な顔には嬉しそうな微笑みがたたえられていた。 灰島和真。彼の通う千歳高校で最も有名な生徒。有名である理由は四つあり、その一つが『ヒーロー』だ。カツアゲやイジメなどを素早く察知し、現場に駆けつけ、する側を成敗する。される側からすれば正しく『ヒーロー』なのだ。彼のおかげで千歳高校における負の面は非常に少なくなったという。不正をしない真っ当な生徒や教師陣にとって彼は、それはそれは格好良くかつ有り難い存在なのである。 逆に言えば不良からは蛇蝎の如く忌み嫌われている。よって狙われたりもするが、結果は全て返り討ち。「正義は勝つってか畜生め……」などと諦めムードで言ってる不良もいるとかいないとか。 『ヒーロー』の紹介は終わったが、残り三つの紹介は追々ということで…… 前へ |次へ |
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