《MUMEI》

一仕事終え、教室に帰還しようと和真は廊下を歩いていた。時間は午後一時過ぎ。絶賛昼休みの真っ最中だ。何故こんな時間にカツアゲしたさ! とか放課後にやれよ! とかツッコミをいれられる箇所はあるものの、人助け出来た和真はご機嫌であった。皆昼食中な為廊下には誰もいない。それをいいことに和真は歌を口ずさみ始めた。普段はしないのだが、まあ、一人きりになると何だか妙なことをしたくなってくるアレのようなものだと思ってやって欲しい。
「ずーいぶんご機嫌だねっ、か・ず・ま。」
得てしてその妙なことをしてる最中に人が来たりするものだ。歌うくらいだったら妙とは言わないだろうが、やはり恥ずかしくて取り乱すのが人間という生き物であろう。
「みっみみみみ澪!? い、いいいーつから聴いてた!?」
「最初っからー。」
クスクスと笑いながら澪と呼ばれた少女が曲がり角から姿を現した。肩まで伸びた黒髪はしっとりしていて美しく、おしとやかに見える。しかし前髪をピンでとめて額を出すことで活発そうに見せている。おしとやかと活発の中間、そして綺麗と可愛いの中間な美少女だ。名を黒川澪。和真の幼なじみである。

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