《MUMEI》

 桜の予感は当たっていた。




 妖月が言った通り、夕刻には雨は止み、宵の空には星がちらほらと見え出した。




「凄いね妖月──」




「ぃゃ‥それ程でもないのだ」




 珍しく照れる妖月。




「それで──なのだがな?」




「何?」




 訊き返す紫苑に、妖月が耳打ちする。




「何だ‥? こそこそと‥」




 何も知らない桜は、ただ首をかしげるばかりだ。





(何故私には教えてくれんのだ‥?)




 と‥思ったが、訊くのはやめた。




(‥やれやれ‥皆目分からん‥)

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