《MUMEI》

この老人が、使いの者に言葉をかけることなど滅多に無い。



それは“T物産”という、肩の荷が一つ下りたことによる、軽い安堵の気持から出た言葉だったのかもしれない…。




運転手「そうでございますね。」…グスッ…。



ドンブリ頭の運転手が、鼻をすすりながら応えた。



J社長「ん?…どうした…?


…風邪か?」



運転手「いえ…。体調は万全でございます。


…失礼いたしました…。」



運転手は、丁重に応えながらハンドルを握るだけだった。



J社長「構わんさ…。」



ジャムおじさんは普段の堅物な印象を払拭するように、和んだ眼差しで運転手の後ろ姿を見つめていた…。

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