《MUMEI》

課長はなかなか戻って来なかった…



フサシは折りを見てはケンイチに電話やメールを送信してみたが… 携帯は依然として繋がらない

《…ケンちゃん…なんで…電源切ってるのかな…… 》



課長から事務所に電話が入ったのはそれから三時間も後だった


段ボール箱を片付けていたフサシのところへ 主任が血相を変えてやって来た

「おい ! 田嶋くん !
大変だォ 矢野くんが アパートで 倒れてて 救急車で病院に運ばれたらしい ! 」

フサシとまわりにいた何人かも… この息を荒げてやって来た主任の予期せぬ言葉に びっくりした

「え !? それで ……」

ヒトはあまりに予期せぬ出来事に遭遇してしまうと 言葉を失うと言うのは……
本当だった…


「…なんでも 課長がアパートを訪ねていくら呼んでも返答がないから…大家に頼んで鍵を開けて入ってみたら…部屋で 倒れてたらしい…ぐったりして…それで すぐに救急車を呼んで病院まで 付いて行ったらしいんだが……… 」

この六十すぎにしては髪の毛のフサフサした主任はそこで 口籠もってしまった…

「課長の話しじゃ……もう息をしてなかったと……
まぁ 詳しいことは後で……それから 何か… 警察が話しを聞きにこっちに来るらしいから …… あっ それから 田嶋くんちょっと……… 」


フサシは 交通事故にでも巻き込まれたかのように狼狽し動揺しているこの定年間近な主任に手招きされて 事務所へ行った…

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