《MUMEI》

(‥喋るだけ喋って今度は寝るのか‥)




 自分に寄り掛かってきた妖月を見やると、桜は溜め息をついた。




「──紫苑」




「───────」




(お前もか‥‥‥)




 一匹と一人に挟まれ、身動きが取れない。




(‥おちおち月を眺めてもいられんではないか‥)




 と、思った時だった。




 ──ゆらり、と。




 青白い炎。




 たちまち、見慣れた七尾が姿を現す。




「おお‥丁度良い所へ来た狐叉──」




「申し訳無い、妖月は直ぐ連れ帰る」




「ぃゃ、そんなに慌てなくとも──」




 だが狐叉は妖月を背に乗せ、深々と二人に頭を下げ、即座に姿を消した。

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