《MUMEI》
病院
冴(サエ)は静かに眠っていた。消毒薬と湿気が入り混じった重苦しい空気の中で、冴がいるそこだけは穏やかな色をしているように見えた。
冴は美しく微笑んでいた。横で私は苦笑する。
私はいろんな冴を知っている。
よく笑う冴。
よく泣く冴。
わがままなな冴。
優しい冴。
淋しがり屋で欲しがり屋の冴。
自信家で何でも持ってる冴。
そして何より誰よりも美しい冴。
正直、冴の全てを知っていたのかどうかは自信はない。私と冴の関係はただの『友人』という枠に当てはまるだけだからだ。
冴と時を過ごした8年という事実だけが妙に現実味がない気もする。
このコと私は一緒に居たんだな。友人だったのか。
冴は一体どう思っていたのだろう。
どうして冴がこんなにも美しく微笑んでいるのかも解らない。
どうして冷たくなってここにいるのかも解らない。
固いベッドは嫌いと言っていたのに、寒い所は苦手とすぐ怒るのに。
どうして冴は選んでここにいるんだろう。
何も解らない私は笑う他なかった。
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