《MUMEI》

矢野ケンイチの通夜は異様な雰囲気に包まれていた…

遺体解剖を待ってからだったので 一週間以上も遅れたが…ある日突然…安眠するように天国へ旅立ったケンイチを乗せた棺は…
確かに中央に置かれていた 。

バイト先の同僚や友人たちに混じって厳かな焼香を終えたフサシに 一人の男が 声をかけてきた


「すみませんが… 田嶋フサシくんですね…… 」
見たこともない中年の男だった


「…警視庁の郷田と言います……ちょっと…矢野さんの事で話し聞かせてよ…… 」

男は何やら金色の菊マークの付いた黒い手帳らしきモノをフサシにチラリと見せて…すぐに ポケットに戻した 。

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