《MUMEI》

(何をあんなに慌てておるのだ‥? 狐叉‥)




 少しはゆっくりして行けばいいものを、と呟く。




(──しかし‥何故止んだのだろう?)




 あれ程降り続いていた雨が、ぱたりと止んだ。




(これも紙術‥とかいうものでやったのだろうか‥?)




「‥あれ‥妖月は‥?」




「狐叉が連れ帰った」




「ぇ──そっか‥」





 残念そうに肩を落とす紫苑。




「また明日にでもなればひょっこりと現われる。──だろう?」




 うん、と小さく頷くと、紫苑は再び瞼を閉じた。

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