《MUMEI》
悩ましい朝
.








《彼》の手から生み出されるモノは、



とても美しく、幻想的で、



見る者すべてを魅了して、



目が、離せない………。








不思議な《魔力》を秘める、



その《彼》を、



ひとは、《魔術師》と呼ぶ−−−。










◆◆◆◆◆







爽やかな、朝。

小鳥たちは美しく囀り、それはまるで生まれたての今日という日を、賛辞しているようだ。

明るい朝日が照らす、その街の片隅で、

わたしは、呆然と立ち尽くし、



「ウソ……」



思わず、言葉をなくしてしまっていた。




チュンチュン、と小鳥たちが近くで囀る声が虚しく響いた。




ここは、こじんまりとしたお店が立ち並ぶ、小さな、小さな商店街。



このわたし−−《秋元 棗》が生まれ、

そして、育った場所。



その昔ながらの商店街の中の、

老舗豆腐屋『秋元豆腐店』のシャッターを見つめながら、わたしは言いようのない苛立ちを感じていた。







その、理由は……………………………………………………………………………………………………………………………………。








わたしはわなわなと震える手の平をグッと力強く握りしめ、


ゆっくりと深く、深く息を吸い込み、


そして、出来る限り大きな声を張り上げて、叫んだ。








「………やられたアァァァァァァァァッ!!」








爽やかな朝の、白んだ空に、


わたしの喧しい怒号が、


吸い込まれていった−−−−−。










「……まぁ、ちょっと落ち着きなさいよ」



目くじら立てたわたしの顔を見て、クラスメートで親友のシホは呆れたようになだめてきた。

授業が始まるまえの教室は、いつものことながら、騒がしい。

クラスメートたちは、バカみたいに大声で笑いこけていたり、ふざけ合っている。

それをぼんやり見つめながら、なぜか、イラッ!としてくる。





………あー、呑気でうらやましー!!

アンタたちには、
どーせ、たいした悩みなんかないんでしょうよッ!!





無邪気なクラスメートたちをバカにするように、フン!と鼻を鳴らした。

.

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