《MUMEI》
謎のドライブ
《まさに姫扱いだな》

「うるさい」


その夜、俺はいつものように忍にからかわれていた。


「それより、…アイツは、弘也はどうしてる?」


俺の声は無意識に小さくなっていた。


《最近京都には行っていない》

「じゃあ、もう諦め…」

《だが》


忍の声に、体がビクリと震えた。


「…だが?」

《妙な動きがある》


忍は相変わらず淡々と話をすすめるが、相づちを打つ俺の声は


「妙…、て…?」


どんどん、小さくなっていった。


《頻繁に毎回車を変えて何処かに出かけている》

「何処か…て、どこだよ」

《わからない。高速を利用してない事だけはわかるが》


忍は春日家の全ての人間の経済状況を、事細かに把握していた。


だからこそ、弘也が新幹線を使い京都に行っていた事もあっさりわかった。


《お前の住んでいる街は、高速を使わなくても行けるが、初めて行く人間は普通高速を使う。

使わないのは、地元に住む人間位だ》

「じゃあ、弘也は、この街に、来ない…よな?」

《来月になってもドライブが続くようなら、また考える》


忍は俺の言葉に同意してはくれなかった。

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