《MUMEI》
巻き込まれ真司
中間テスト終了後


「…珍しいな、真司」


『英語が』と呟く拓磨と


『数学ヤバい』と呟く守はいつも通りだったが


真司が疲れた表情をしてうなだれているのを、俺は初めて見た気がした。


「あ〜、違う。テストは、まあそこそこ出来たんだけど、さ…

精神的な疲れがちょっと残ってて」

「精神的な疲れ?」


(昨日は普通だったよな?)


少なくとも、放課後図書室に行くまで真司はこんなに疲れていなかった。


「朝倉奈都がいたんだよ」

「…あー、まーテスト前だし、最近見掛けなかったけど、元気だったか?」

「そりゃ祐也には近づけないだろ?…元気過ぎるほど元気に美咲睨んでくれたよ」

「瀬川を? 何で?」


首を傾げる俺に、真司は


奈都が部活を辞めた事


新しく部長になった瀬川が辞める奈都を引き止めなかった事


今年は、図書委員になっていた事


を、説明してくれた。


「渡辺さんが美咲連れて早めに帰ってくれたからいいけど…」


(真司が疲れるなんてよっぽどだったんだな)


真司には悪いが、いつも通り図書委員にならなくて


いつも通り図書室でテスト勉強しなくて良かったと心から思ってしまった。

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