《MUMEI》
サイトウ
愛理さんは最初志貴と盛り上がっていた。


それから、頼とエイミーのバカップルをからかい


「相変わらず綺麗ね、田中君」


最後に俺の所にやってきた。


「そんな事無いです」

「そんな事あるわよ。美形男を見慣れてる私が言うんだから」

「アハハ」


確かに愛理さんの地元


『シューズクラブ』の店員達は皆美形だった。


「あのさ…」

「はい?」

「田中君の知り合いに、サイトウさんって、いるかな?」

「…は?」


(何だ? 急に)


俺は思わず愛理さんを凝視してしまった。


「知らない? 三十代位で、黒髪で、身長や顔は平凡で額にほくろがあるらしいんだけど」


そう言って、愛理さんは額の中心を指差した。


「知りませんけど…」


弘也の苗字は春日で


歳は、確か今は二十代半ばで


ほくろ…は、会った時は確認できなかった。


「じゃあ、去年文化祭来て『二人静』の田中君見ただけのストーカーね。
一応、志貴ちゃんと、あと柊君にも伝えておくわ。
これから、明皇寄るから。
伝言ある? ていうか、乙女柊君見たいから、何か励ましの言葉がいいんだけど」


愛理さんはあっさり話題を切り替えた。

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