《MUMEI》

 桜は蓮宮を、紫苑は菊宮をそれぞれ呼び出した。




「如何なされました? 紫苑様──」




「話があるのだ」




「はい──」




 きょとんとしながら、蓮宮が腰を下ろす。




「んんっ‥」




 軽く咳払いをし、桜が口を開いた。




「すまん、私は‥‥‥お前に嘘をついていた」




「嘘‥?」




「私は‥‥‥紫苑ではなく桜だ」




「!?」




 蓮宮が驚いたのと、隣りの帳の内で紫苑の話を聞いていた菊宮が驚いたのはほぼ同時だった。




「それは‥どういう‥‥‥?」

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