《MUMEI》 . ………意味不明な、スカイブルーの、記号の羅列。 ビビッドイエローで縁取りされた、アルファベットに似せた文字。 それに、巻き付くようなデザインで、 鮮やかなグリーンのドラゴンみたいなマスコットが、 変わり果てたシャッターの中から、 わたしの方を、じー…っと、睨みつけていた。 率直な感想としては、 ………全然、かわいくない。 ………し、かっこよくもない。 ………し、田舎っぽくてダサイ。 目が、チカチカするな。 そうおもっただけ。 それだけ、マジで。 しばらく、そのドラゴンもどきと見つめ合っていた。 …………まえの日。 じいちゃんに頼まれて、お店のシャッターを閉めたのは、 わたし。 寒い、寒い!!って、文句いいながら、 乱暴にシャッターを閉めたんだけど。 でも、そのときは、 シャッターには、なにも描かれてなかった。間違いない。 いつもとおなじ、 鈍く輝くシルバーの、シャッターだった、はず………。 ………つーことは、 だれかが、夜中に………………?? わたしは、サッと顔を青くして、大声でわめいた。 「じいちゃぁぁんッ!!お母さぁぁんッ!!シャッターが、大変なことにッ!!??」 そのあとは、ホントに大騒ぎ。 家族みんなでドラゴンもどきの落書きを目の当たりにして、 あーでもない、こーでもない、と言い合って、 目撃者もいないし、心当たりもないから、 悪質なイタズラっつーことで、 結局、自腹切ってペンキを買い、 自分たちで、そのドラゴンもどきを塗り潰した。 ………その日を境に、 次の週には、2軒先のお茶屋のシャッターが、 その次は、ウチから少し離れた婦人洋品店が、 次から次へと、 その、謎の《グラフィティ》の被害を被った。 . 前へ |次へ |
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