《MUMEI》 好かない理由. ただでさえ、巷でも『シャッター商店街』と名高い、この通りは、 その《グラフィティ》事件のせいで、 不良たちのたまり場だと、根も葉もない噂を流されて、 ますます活気がなくなっていった。 …………さらに。 落書きを消すために使うペンキは、わたしン家と同じように、 当然ながら、各店舗での負担となり、 まったくバカバカしいこと、この上なかった。 いよいよ頭を痛めた、町内会長さんは、 やむを得ず、警察に被害届を提出して、 深夜の巡回をお願いしたものの、 一向に、状況は改善されず、 今朝もまた、 わたしン家が、 《グラフィティ》の餌食となったのだった………。 わたしは大きなため息をついた。 「お巡りさんも、なんにもしてくれないしさ……町内会独自で見回りしても、年寄りばっかりじゃん。ムリがあるんだよね」 遠い目をして言ったのだが、シホはあまり興味がないのか、自分のネイルを眺めて、「あ、剥げちゃってる…」と呟いていた。 わたしは半眼で親友を睨んでいると、シホはその視線に気づいたのか、急に顔をあげて、ため息をついた。 「でもさ、もーあれなんじゃない??潮時??棗ンとこの商店街、はっきり言ってイケてないし」 心ない言葉が、わたしの胸に突き刺さる。 「なんだって!?」 物凄い剣幕でいきり立つと、シホは冷静に、「だってホントのことじゃない」とサラっと答えた。 「すぐ近くにおっきいスーパー出来てから、みんなそっちに行くようになったじゃん」 …………そうなのだ。 《グラフィティ》事件が勃発する少しまえに、 わたしの商店街の近くに、 大型ショッピングセンターが出来た。 それは、この近隣では最大規模の商業施設で、 何百というテナント数を誇り、 ちょっとしたテーマパーク扱いをされて、 イヤミなことに、テレビCMとかバンバン流して、 そのおかげで、 近所のひとたちだけでなく、 郊外に住むひとたちなど、 たくさんのひとたちが、連日訪れているらしい。 . 前へ |次へ |
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