《MUMEI》
≫謎の青年≪
「また・・・。」


それは突然だった。


空は薄暗くなり、夕日が沈む頃。


ゆかりはいつものように部活を終え、疲れきった 体に鞭打ち帰宅している途中だった。


友人と街路を通り、三つ目の角に差し掛かった所でまた明日ね、と笑いながら別れる。


ゆかりは今日の夕飯のおかずや、楽しみにしているテレビ番組のことを思い浮かべながらまた歩き出す。


ところが、とある病院にに差し掛かった時、ゆかりは立ち止まった。


病院の門内に佇む青年。


この病院に入院しているのだろうか。


青い縦縞(タテシマ)の、上下パジャマを着ている。


真っ黒な髪は乱れており、顔色は悪く、どこか窶(ヤツ)れているようにも見えた。


別に怖かったのではない。


ただ、何とも言えぬ雰囲気に取り込まれてしまった、とでも言おうか。


青年の瞳は、その格好からは考えられないほどに生気に満ち溢れていた。


真剣な眼差しで遠くを見つめていた。


何故だろう?


ゆかりはその青年から目が放せずにいた。

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