《MUMEI》

.




その代償として…………。





わたしの商店街は、


深刻な顧客離れが発生し、


経営が苦しくなるお店が続発して、


どんどんお店をたたみ、


かつては、30店舗はあった賑やかな商店街は、


今や、その半数以下となってしまい、


すっかり寂れて、見る影もない………。





絶句しているわたしに、シホは追い打ちをかける。


「お店いっぱいあるし、映画館まで入ってるから、一日遊べるしね〜。今日帰りに、一緒に行こーよ」


呑気に提案してくるシホを、全力で睨みつけた。


「絶対、イ・ヤ!!」





…………なんでわざわざ商売ガタキのところに行かなきゃなんないんだッ!!





そう言い切ると、シホは呆れた顔をした。


「商売ガタキって、大袈裟な。別にアンタが豆腐屋を切り盛りしてるワケじゃないんだし」


さらに、「混同しすぎ」と付け足される。
痛いところを突かれて、わたしは言葉を飲み込む。


シホはやんわりとつづけた。


「商店街の良さっていうのもあるんだろうけど、今の時代、流行らないよね」


当たっているだけに、なにも言い返せない。
悔しさのあまりシホを睨んでいると、隣から長島君が口をはさんだ。


「まあ、そんな時もあるって!下り坂のあとは、上り坂しかないんだからさ!!」


なんか良くわからないが、励まされた。

わたしはチラッと長島君を見た。彼は爽やかに笑い、頷き返してくる。


「明るく前向きに頑張れば、そのうち光は射すよ!!」


……我慢も限界だった。


わたしは勢いよく立ち上がると、長島君の鼻先を指さして、叫んだ。


「……つかすべての原因は、アンタん家じゃんッ!!」





長島君のお父さんは、例の大型ショッピングセンターの、代表取締役。


つまり、社長サン。


つまり、ショッピングセンターをこの街に建てたのも、


長島君のお父さんの指示のワケで。


おかげさまで、


そのあおりを、わたしたち商店街の人間が


もろにくらっているのだった−−−。





ちなみに。





………それが、わたしが長島君を好かない理由のひとつだ。





.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫