《MUMEI》

わたしはピタリと足を止め、二人を振り返り睨みつける。


「ついて来ないでよ!!」


叫ぶように言ったのだが、ムダだった。二人は顔を見合わせて、それからわたしの方を見た。


「いいじゃん、行くくらい」


わたしはすかさず、良くないッ!!と返す。


「ヒヤカシならお断りッ!!どーせ、面白がってるだけでしょッ!?」


わたしの言葉に、

ふたたび二人は顔を見合わせて、それからわたしの方を見、シホが答えた。


「当たり前じゃん、それ以外にナニがあんのよ??」


はっきりと答えられて、逆にわたしは言葉をなくす。

その顔を見て、長島君が「ヘンな顔〜!!」と、ゲラゲラ笑った。





…………コイツらッ!?





わたしが怒りでわなわなと身体を震わせていると、シホがそれを察したのか、「ジョーダンよ、ジョーダン!!」とおどけて見せた。


「わたしたちなりに、心配してんだよ」


優しく言った親友に、間髪入れず、ウソつけっ!!と言い放つ。

すると、長島君は顔をしかめてぼやいた。


「ウソって、ひでーな」


シホは長島君に頷き返す。


「ホント、友達がいのないヤツね」


フツーの調子でのたまう彼らに、わたしは、そのまま返す!!と叫んだ。







−−−そんなこんなで、


ギャアギャア言い合っているうちに、自宅である豆腐屋に着いてしまった。


お店には、お客はいなかった。


ついでにいうと、店番もいなかった。





…………やる気なさすぎ。





いつものことながら、呆れる。


わたしが脱力感に襲われていると、

その背後から、シホと長島君の声がひそやかに流れてきた。


「……え??お店やってんの??」


「まさかぁ!!見てみろよ〜。だれもいねーし、休みじゃん??」


「でも、シャッター開いてるし」


「空気入れ換えてるだけだろ〜??」





…………どいつも、こいつも!!





わたしは二人に振り返り、半眼で睨んだ。


「……お店はやってマス。これでも開店してマス。お客がいないのは、長島君のせいデス」


低い声で言うと、長島君は「なんで俺のせいなんだよ〜」と非難じみた声で反論してきたが、面倒なので無視した。

わたしは店の中に入り、奥の自宅に向かって大声で言った。


「ただいまぁ〜!!」


返事は、ない。

テレビでも見てるのだろうか。





………つーか、店ほったらかして、


テレビとか、ありえないからッ!!





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