《MUMEI》 「──森下さん」 「?」 「やはり僕は──このまま‥お伝えしない方がいいのかも知れません」 「ぇ──」 「いいんです、僕は花禀様が──笑顔でいて下されば」 「本当に‥?」 「──はい」 花禀様が悲しんだり‥涙を流されるのが‥僕には一番辛い。 花禀様が笑顔でいて下さる事が、僕にとっての幸せ。 「──ねっ神山──もう1回やりましょ♪」 「──はい」 また、連弾が始まった。 「──篠河君‥?」 「僕はピアノは弾けません。──ワルツも踊れません。執事としての仕事も‥」 「篠河君、どうし‥」 「でも、花禀様の笑顔を守りたいと思うのは──わがままでしょうか‥」 「──わがままなんかじゃないわ。大切な人の笑顔は──誰だって失いたくないもの。──でしょっ?」 前へ |次へ |
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