《MUMEI》 「ねぇ、智香(チカ)。」 「うん・・?」 「緑川総合病院にさ・・・。」 学校での昼休み。 二人は教室の片隅で弁当を広げている。 ゆかりは思い切って彼女の親友である、前島智香(マエシマ チカ)にあの青年のことを話してみた。 いつも下校時刻に同じ恰好で、同じ場所に立っていること。 前は真剣な表情でどこか遠くを見つめていたのに、最近では淋しげな表情でずっと俯いていること。 ゆかりは智香に全てを話した。 「遂にゆかりにも春が来たんだね。」 「はい?」 案の定、智香はニヤリと微笑む。 こんな話しして、真面目に聞いてくれる何て思ってなかったけど・・・。 ゆかりはガックリと肩を落とした。 結局勘違いされるから今まで言わないでいたんだけど・・・。 ゆかりは智香の様子を見て更にため息を付いた。 智香は興奮してまくし立てる。 「で? その青年に一目惚れしたんでしょ!?」 前へ |次へ |
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