《MUMEI》
七月十日
その日は厳と頼の誕生日で


柊が通う明皇の文化祭の、一般公開一日目だった。


俺は、昼間は志貴達と明皇に行き、夜、高山本家で開催される誕生日パーティーに参加する予定だった。


少なくとも、俺はそのつもりで、部屋を出た。


しかし


《祐也今何処!?》

「悪い、柊。ちょっと静かにしてくれ」

《何処だよ! 皆探してるんだよ!》

「あ〜、…探さなくていいや」


(見つからないし)


俺は今、新幹線の中にいるのだから。


《何それ!?》

「だからな…、あ、」


そこで、俺の携帯は、俺を拉致した男に奪われた。


「ごめんね。祐也は今日一日俺が借りたから」

《な、…》


ピッ


「…おい、勝手に切るなよ」


俺は携帯を奪い返そうとしたが、携帯はその日戻って来る事は無かった。


「お弁当、買ったわよ」

「は〜い。行こう!祐也」


(全く何で俺まで)


俺は、前を歩くバカップル


頼とエイミーの背中を睨みながら座席に戻った。


今日は二人の婚約記念パーティーも兼ねていて


アメリカから、エイミーの母親と頼と厳の両親が来日する為、俺まで出迎えに付き合わされている状況だった。

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