《MUMEI》
さくら's ダウト。
  
何だかワケが分からない奴が部屋に尋ねて来た。

背の高い金髪碧眼の”いかにも外国人”という風体で、その長く伸ばしたブロンドを後ろに一括りにして、旅行者というカンジのリュックを背負っていた。


事前に電話で「変な外人がアンタの事探してるから気を付けな」と言われてはいたけど、実際来てみるとただのバカのようで『アイウォンチュー!』と叫んだりドイツ語を早口で話してきたりしていた。

これは頭のおかしい奴かと思ったけど、一生懸命会話をしようとしていたり、知ってたドイツ語をちょっと話してみただけですごく嬉しそうな顔をしたり、なかなか可愛い奴だった。

それに…”カワイー弟子にして下さい”とか…。

私はただのライターだから弟子とかいらないんだけど、なんとなく見た目もそうだけど可愛いのもあって油断して部屋に入れてしまった。


(どうしよう……怒らせて帰すってのはアリかな?)

そう思って、まずは緑茶に砂糖を入れて出してみたんだけど、アイツは何も言わず普通に飲んでしまっていた。

外国人は緑茶に砂糖とミルクを入れる、って本当だったんだな…。


”一緒に寝る”と言ってきた時はチャンスとばかりに思いっきり頭に拳いったったけど、子犬のような目を向けてビックリしただけで、何も怒りもしなかった。


何か、まるで私がイジメてるみたいじゃんか…。


夕飯まで作ってもらっちゃって、それも美味しかったし…。

どうしようかな。
  

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