《MUMEI》

「──なぁ狐叉──」




 夕暮れの中に伸びる、二つの影。




「本当に‥びっくりされないだろうか」




「不安か」




「ぃゃ、不安‥じゃないのだ」




 とぼとぼと歩く妖月を、狐叉が尾で掬い上げ背中に座らせる。




「自分で歩けるぞ?」

「──いいから座っていろ──」




「むぅ‥」




 何故子ども扱いばかり、と妖月は思うのだが。




 一方で、嬉しい気持ちもあった。




(いつか狐叉みたいになりたいな──)




 狐叉の背中で揺られながら、そう思った。

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