《MUMEI》

下校時刻。


「だからさぁ、智香のスパイク、なんか癖があるんだよ。」


「うそ、マジ!?

全然気が付かなかった!」


二人して今日の部活のことをあーでもない、こーでもない、と言いながら街路を通る。


そして三つ目の角に差し掛かった。


いつもは智香とゆかりはここで別れるのだが。


今日の昼休み話した通り、智香はゆかりの帰宅路を共にした。


「ここ。」


「うわぁ、案外大きいね。」


「そりゃあ、総合病院だもん。」


「でさ、例の青年ってどこなのよ?」


智香は仕切りに辺りを見回している。


「え?

いるじゃん、そこに。」


ゆかりはいつもの木の下を指差した。


智香はゆかりの指差した方向を見やった。


額に手をかざし、目を細める。


「居ないじゃん。」

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