《MUMEI》

「‥まだ決まらんのか‥?」




 流石に退屈になってきた桜。




 香選びに夢中になっている紫苑は、その事にまるで気付いていない。




(‥全く‥)




 大きく溜め息をつき、ふと‥隣りに目を向ける。




(ん‥‥‥)




「どうしたの?」

「ぃゃ、綺麗な布だな、と」





 ──淡い桜色。




「似合いそうだね」




 紫苑が囁くと、桜が僅かに頬を染めた。




「なッ‥何を言うかっ」




「そんなにむきにならなくても‥」




「‥お前がおかしな事を言うからだ」

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