《MUMEI》

「おりぇ…お兄ちゃんらから、泣かなぃ///」
「ゴメンねくるみちゃん…」

幼稚園は延長保育もやってはくれるらしいんだけど、今日は夜遅くなりそうだったから、幼稚園ではなく遅くまで預かってくれるアットホームな所にくるみちゃんを連れて行った。

でもこんな…僕のワガママみたいな事で預けるのも気が引けたが、こんな夫婦の用事であっても子供を預かってくれる所がある事に驚いてしまった。

「くるみちゃん…」
「アキラしゃん…」

くるみちゃんからいつまでも離れない僕に、克哉さんが『もういいだろう…』と半ば呆れた様子で言ってきた。




「お前は…くるみが好きなのか?」
「もちろん好きですけど」
「いや、そういう意味じゃなくてな…」
「?」

克哉さんの言いたい事がよく分からなかったけど…信号待ちの時、車の助手席に座っていた僕の手を突然ギュッと握ってくると、克哉さんは自身の太もも辺りにその手を置かせてきた。

「あっ///」

そのまま僕の手を撫でてきて…鈍い僕でもさっきの言葉で言いたかった事の意味が分かった。

「そうやってくるみに構いっきりで…私の方が無視されているのかと思った」
「…は…ぃ///…ごめんなさい///」
「今日は、謝るのは無しだ…」

克哉さんが手を離しても、僕は克哉さんの足に置いた手を外しはせずに、そっとその足を撫で続けた。




車はある邸宅のような所に着くと、そのまま玄関のような所に停車した。

(あぁ…映画で見るような…アレだ)

僕らは車を降り、克哉さんはそのまま慣れた動作でボーイさんに鍵を渡すと、僕を抱き寄せながらその入り口に入って行こうとした。

「えっ、ぁ…///」

僕がいくら女性に見えるからといっても、今日僕が着ている服はどう見ても男性物で、外で一緒にくっつく事は極力避けていた。

「いいんだ、ココでは」
「ココ…では?」

薄暗い中に入って行くと、中にはカウンターもあって普通にあるバーのような雰囲気だった。


ただひとつ…普通と違ったのは、そこに居る人達は全て男性同士のカップルだった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫