《MUMEI》
勘違いの代償
大慌てで、タカヒロさんにつかみ掛かる。


「ウソッ!!だって、美大生って!!こんな……」


そこでまくし立てるのを一旦やめ、チラッと《彼》を見る。


薄汚れたタンクトップ。だぼだぼのワークパンツ。日に焼けた逞しい腕。肩に掘られたタトゥー………。





…………てか、





『美大生』のイメージと、





掛け離れすぎなんですけどッ!!!!!





なにかの間違いにしか思えない。

事態がのみこめず、呆然としているわたしに、



《彼》が半眼でこちらを睨みながら、呟いた。


「信じられないなら、学生証見せようか??」


自信に満ち溢れた声だった。

それにつづけて、竹内さんが言う。


「間違いないよ。格好が独特だから、信じられないかもしれないけど、僕も証明する。僕たち、同じ学科なんだ」


………さらには、タカヒロさんまでも。


「このひとたちは、いつもウチを利用してくれてるんだよ」





…………そんな。





ようやく、自分がはやとちりしたことに気づき、





瞬間、





−−−青ざめる。








わたしの心情を察したように、











「………どうオトシマエつけてくれんのかなぁ??」











《彼》が、楽しげに呟く声が聞こえた気がした−−−。










◆◆◆◆◆◆










「………申し訳、ありませんでしたぁ」




トメばあちゃんの和菓子屋の店先で、



お客さん用の長椅子に腰かけながら、



わたしは《彼》に向かって、深々と頭を下げた。



《彼》は、わたしがお詫びに買ったまんじゅうを頬張りながら、素っ気なく「聞こえなぁ〜い!」と呟く。


「それで謝ってるつもり??俺、アンタに悪者扱いされて、すっげー傷ついたんだけど〜」


明らかに面白がっている。
見え見えだ。





…………くっ!!





悔しかったが、なにも言い返せなかった。

.

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